所属
株式会社 環境構成影響研究所(構影)
調査管理部・現場対応班(桐野班)
生年月日
1994年
外見
ショートボブの髪に、ぱっちりとした目元。童顔気味で、明るく親しみやすい雰囲気をまとっているが、妙に距離の詰め方が早く、誰に対しても分け隔てなく馴れ馴れしい。
白シャツとパンツスタイルを定番に、袖をまくってせっせと働く姿が印象的。
作業は几帳面で早く、報告書も正確。だが、笑顔を浮かべながらも目だけが笑っていないことがある。
いつも背負っているリュックは、あれこれ物を詰めすぎてやたらと重たい。
話し方
普段の口調はとにかく元気で、明るく、ノリがいい。語尾には「〜ですよね!」「〜っす!」などが頻繁につき、会話中もリアクションが大きく、声もよく通る。特に驚いたときや褒められたときは「マジっすか!?」「いや〜〜さすがです!!」など、過剰にテンションの高い返しをする癖がある。
業務上は一人称を「私」として丁寧な言葉遣いを心がけているが、親しい相手や気を抜いた場面では「自分」を使い、語調も砕ける。語彙にはどこか体育会系の名残があり、どんな内容でもポジティブ変換しようとする節がある。
だがその明るさにはどこか過剰さがあり、よく見れば「元気であろうとする意志」が透けて見える。無理をしてでも空気を明るくしようとする、そんな不自然な均衡が彼女の声には宿る。
内面・歪み
過剰な明るさは、悲劇を覆い隠すための防衛でもある。
小学校の修学旅行中、家が全焼し、両親を同時に亡くした過去を持つ。それ以降、「自分だけが楽しく生き延びている」という罪悪感と、「もしかしたらどこかにまだ会える手段があるかもしれない」という祈りのような妄想が、酒井の根にこびりついている。
彼女がオカルト案件に人一倍前のめりなのも、その延長にある。「お化けが本当にいるなら、きっと両親にもまた会えるはず」――そう強く信じているからこそ、不可解な現象や不気味な場所に対して異様な執着を見せる。休みの日には深夜の心霊スポットを一人で巡り、カメラを回したり、録音機を忍ばせたりもする。目的はただひとつ、「見たい」から。
ただし、この“見たい理由”を人に話すことはない。あまりに重たすぎて引かれると、自分でもわかっているから。
だから彼女は、こう言ってごまかす。
「自分、オカルトとかめっちゃ好きなんですよ〜!こわ〜い話とか大好物っす!」
そうやって、明るく振る舞う。声を弾ませ、笑ってみせる。
誰かと明るく話している間だけは、「お化けを探してる女の子」じゃなくて済むから。
経歴
小学校6年生の修学旅行中、自宅が全焼し両親を亡くす。突然の喪失をきっかけに、彼女の人生は静かに変わっていった。以後は祖父母の家に引き取られ、温かく、丁寧に育てられる。祖父母は彼女の悲しみを知りながらも、それに無理に触れることなく、ただ「今ここにいてくれること」を何よりも大切にしてくれた。
その穏やかな環境の中で、酒井は“悲しみを見せない子”として育った。泣いたり、荒れたり、塞ぎ込んだりする代わりに、「明るく元気であること」を自分の役割として選んだ。その方が祖父母も安心するし、自分も日々をうまく乗り切れる気がしたから。
反抗期らしい反抗もなく、特に問題を起こすこともなく、ただ淡々と“ちゃんとした女の子”を続けてきた。
「お化けを見たい」という個人的な執着も、“オカルト好き”という明るいパーソナリティにすり替えて笑い飛ばすことで、ずっと心の奥に隠してきた。
大学進学後も地元を離れることなく、構影に採用されるまでずっと祖父母宅で暮らしていた。
研究所への就職は、彼女にとって「明るいまま、でも自分だけの場所を持つ」ための第一歩だったのかもしれない。
構影入社の経緯
求人情報にあった「現地調査多数・不規則勤務あり・実地対応重視」の文字に、酒井はまっすぐ反応した。
「ここなら、仕事中にお化けが見れるかもしれない」――それが、彼女がこの会社を志望した唯一の理由だった。
応募動機としては「フィールドワーク中心の環境に興味があり、自分の性格にも合っていると思った」と当たり障りのない内容を伝え、筆記も面接も普通にこなし、すんなり内定をもらった。
面接の終盤、現れた所長・須賀康弘に「うち、ちょ〜っと特殊でぇー、深夜にお化け出るかとか見に行かないといけないけど、大丈夫〜?」と笑いながら言われたとき、彼女の目は明確に光った。
「それ、めっっっちゃ得意っす!!むしろそういうの、うちの真骨頂なんで!!」
そう言って前のめりになった彼女を、須賀は面白がるように見ていたという。
業務姿勢
基本的には真面目で、どんな業務にも手を抜かず取り組むタイプ。怪異案件に限らず、書類の整理や観測機材の準備、報告書作成など、地味な作業にも黙々と取り組む姿勢を見せる。表面的にはいつも元気で軽い口調だが、業務中の集中力は高く、作業効率も早い。
ただし、“怪異の可能性がある”と判断された案件に関しては、明らかにテンションが異常に上がる。
ふだんの数倍のスピードで資料をまとめ、現地に行く前から地図を広げ、既知の心霊スポットと照らし合わせるほどの熱量を見せる。
調査にはだいたい千田とペアで向かうが、実質的な調査行動のほとんどは酒井が行っている。千田は形式上同行しているものの、実際には車の手配や書類の確認など裏方に回り、現地で記録をつけるのも撮影を行うのも、ほぼすべて彼女の独断で動いている。
それでいて問題が起きないのは、彼女の作業精度と判断の正確さが一定以上であるため、上からの信頼も得られているからである。
社内関係値
酒井が採用された背景には、須賀の意図的な人事配置がある。
履歴書と面接で彼女の“明るさ”の背後にある異常性を即座に嗅ぎ取った須賀は、「この子を桐野君の下に入れたら、いずれ失踪して桐野が罪悪感で苦しんで面白くなりそう」という理由で採用を即決した。
普段の調査業務では千田とペアを組むことが多い。
だが実際には行動の主導権は酒井が握っており、千田は“ブレーキ”というより“見届け人”に近い。彼女が危険な方向へ突っ走らないように、最低限の常識で場を整えているが、彼自身も彼女の熱量を完全に制御できているとは言い難い。
桐野とは直属の上司という関係だが、酒井の距離の詰め方がバグっているため、最初から微妙な空気が漂っている。
真面目なやり取りをしようとすると、「ですよね〜!桐野さんさっすがっす〜〜!」と謎のテンションで返されるため、桐野はうまく受け止めきれていない。
ただし、業務報告や資料提出の精度は高いため、叱責する理由もなく、そのまま放置されがち。
ほぼ同期である江草慎二にも、酒井はやたらと絡みにいく。
「江草さ〜ん!この前の資料すっごかったっすね!マジで天才っすよね!」
「え、もしかして今日めっちゃ機嫌悪いっす?でもそれも顔に出ないタイプっすよね〜〜!」
そんな具合に、とにかく話しかける。だが江草は基本的に無視はしないが、ぼそっと「うるせぇ」返すだけだったり適当に流すため、会話が成立している場面は滅多にない。
それでも酒井はまったく気にせず、むしろそれすら楽しんでいるかのように、毎回同じテンションで話しかけ続けている。
その他 特筆事項
現在は会社の社寮で一人暮らしをしている。通勤や勤務形態の利便性以上に、「祖父母の前では明るく振る舞わなければならない」という無意識の義務感から解放される場所として、その生活を選んでいる節がある。
社寮にいることで、深夜にひとりで心霊スポットに出かけても誰にも咎められず、怪異案件の“予習”を私的に進めることもできる。
その生活リズムは決して健全ではないが、本人はむしろ「やっと息ができる」とすら思っているふしがある。
日常の振る舞いに不安定さは見えないが、誰の目もない夜中の行動だけが、彼女の本性を静かに語っている。
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